「田端が教えてくれたんだ。おまえがここにいるって」
「そんな……田端は……」
「田端がどうかしたのか」
福井は原田の目の前に立ち、逃げ腰の同級生に向かって言った。
「原田、おまえが何を言いたいか知らないが、俺に田端から連絡がきたんだ。俺と田端が高校の時、吉村を駅のホームで囲っている動画をおまえが持ってるって。その動画を持って原田は警察に行こうとしているから、原田のスマホを取り上げてくれって、田端がラインしてきた。だから、おまえのスマホをよこせ」
手を出して迫ってくる福井に、原田は後ずさり首を横に振った。
「俺は……駅のホームで福井や田端を見ていないし、ましてや吉村を囲んでいる動画なんて撮ってないから……」
「いいから、四の五の言ってないでスマホをよこせ」
「イヤだ」
「そんなら、腕ずくでも出してもらう」
福井のつり上がった目を見て、原田は唾を呑んで言った。
「なんで、そんな……」
「俺はエリートコースを目指してるんだ。今頃、高校時代のイジメの映像なんか……ましてや死んだ奴の動画なんか世に出たら就職に響くんだよ。だから、おまえのスマホよこせ! 抵抗するなら、おまえも吉村のように痛い目をみてもらうからな」