眠れる森の復讐鬼

午後十七時頃、主治医の山下真奈美が海智の病室に回診にやって来た。相変わらずの無愛想である。

「どうですか?」

(どうですかも何もあったもんじゃない。入院して血液検査とエコー検査をしただけだ。それで何か変わりがあればこちらがびっくりだ)と思ったが、「変わりありません」と海智も無表情で返してやった。

「退屈でしょうけど、大事な検査なのでしっかりやっていきましょう」

そう言って部屋を出て行こうとする女医を海智は呼び止めた。

「昨夜、中村大聖が亡くなったんですよね。僕、同級生だったんです」

女医は細い目を少し丸くして驚いた様子だったが、その眼に今まで見たことの無い輝きが灯ったのに海智は気付いた。

「同級生? じゃあ蒼先生とも同級生ってこと?」

「ええ、中学の頃は一緒によく遊んでいました」

「へえ、そうなんだ」

眼の輝きだけではなく、声のトーンも今までより数段高くなった。