約束のアンブレラ

静岡県警捜査本部では木嶋が細長いホワイトボードの前で腕を組んでいた。まるで睨むような眼光で久原真波失踪事件と死体遺棄事件の概要や聞き込み情報などに目を凝らしている。

ホワイトボードに貼られたメモ書きや相関図は事件の複雑性と、静岡県警の捜査員たちの執念とも感じられる情報で隙間のないほど埋められていた。

「木嶋さん、清水巡査の様子はいかがでしたか」

「ああ、静岡中央病院に見舞いに行ってきたが、変わらず意味不明なことを言っていた。それで、新たな情報はないか。俺が不在にしている間に進展なしとは言わせんぞ。鳥谷、この意味不明な絵の写真だけ送ってきよって。被害者の身元の特定はあとどのくらいだ」

走ってきたのか、息を整えながら木嶋は低い声で言った。捜査員もその言葉を聞き逃さないように聞き耳を立てているようだ。

「急がせておりますが、この時期ですし」

「黙れ、警察に年末年始なんてないと思え。もうすぐ日暮だ。十七時までには終わらせるように伝えてくれ。鳥谷には、この事件を解決してもらわなければいけない」

木嶋は息巻いた様子で声を張り上げた。

「先ほど相棒の深瀬さんより、藤山にある古い蔵についても調べて欲しいと応援要請があったようです。犯人がそこに潜伏していた可能性もあるとかで」

木嶋は大きく頷くと時計を見つめた。