「知、仕事が忙しそうじゃない?」

「そうなんだよ、この間試飲会のプロジェクトリーダーで頑張った! 案一発承認。ヤッターって感じだった」

「そうなんだ、ヤッターだね」

「邦と咲がね、俺に力をくれたんだ、ありがたかった」

「邦君と咲、また会いたいなあ」

「今度また四人で会わないか、時間を作るよ」

ときめき! いいやそうではない、でも、安心で穏やかで悲しいほどに懐かしい気持ちが史の全身を包み込んでいた。

知之は、ずっと史に抱き続けてきた感情が、久々に会ったこの時、確かなものだと確信した。〈史には幸せになってもらいたい、史が幸せになるならどんなことでもする、できる〉

少しずつお客の数が増えてきた。史と知之はカフェを後にした。

「史、少し一緒に歩くか」

「うん、いいよ」

二人はゆっくり歩き始めた。少し進むと公園が見えてきた。

「公園か~~久しぶりだな、行ってみるか」

「行こう、行ってみたい」

ベンチに腰をかけると、幼い子供と母親がやって来た。子供がブランコに乗りたいとぐずっている。その光景に二人は思わず顔を見合わせて微笑んだ。

「あの、史、実は……いいやなんでもない」

「なによ? 言いかけて止められると気になるわ」

「ごめんごめん、ほんとに大したことじゃないんだ」

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