【前回の記事を読む】「実は俺、病気なんだ」知之の決死の告白に家族は肩をふるわせ涙をこぼした。一方地元の同級生は町の活性化に頭を悩ませ――
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聡一郎と史がレストランにいる。聡一郎が選ぶレストランは、いつも素敵で料理もワインも抜群だ。いつからか、「聡一郎さん」「史さん」と呼び合うようになっていた。
「史さん、今日も素敵だね」
「聡一郎さんも」
「史さん、松山のご両親に会いたいんだけどどうだろう」
「え? 両親に?」「うん、でもその前に史さんの気持ちを聞かないとだめだよね」
「私の気持ち?」
「ぼくは、史さんに一目ぼれだったんだ。史さんのさわやかで、キリリとした振る舞い、相手を尊重する言動、素敵だと思う。ずっと好きなんだ」
史は驚いた。聡一郎の気持ちはそれなりに気付いていたつもりであったが、そこまでとは思ってもみなかった。
「ありがとう、聡一郎さん。聡一郎さんは素敵だし、物静かなところも好きよ、医師として尊敬もしてる」
「ありがとう、史さん。これで気持ちが楽になったよ。時々僕以外の誰かの存在を感じて不安だった」
〈このまま聡一郎との話を進めてよいのだろうか〉史は不安になった。聡一郎への気持ちが一途であるのかどうか、確信が持てないからだ。史は両親に会う時期をもう少し先にするように依頼した。
聡一郎が、病棟医長に呼ばれている。
「進藤君、仕事頑張ってるね。患者さんや看護スタッフからの評判が上々でね。私も嬉しいよ」
「ありがとうございます。嬉しいです」
「ところで、結婚する気はないかい? 教授の娘さんが外来で君を見かけたらしくて、是非会いたいと言ってるんだ」
「あの、誰か別の人ではないですか? 僕なんてとんでもない」
「教授も乗り気でね、是非受けてくれないか」
聡一郎は、焦っていた。「好きな人がいる」と言えば、この話を収めることができるのだろうか。その相手は誰かと詮索されて、もし史に迷惑がかかることになったら。聡一郎は、「少し考えさせてください」と答えてその場を離れた。
聡一郎は、史との結婚を真剣に考えている。教授のお嬢さんの話をすれば、史は即座に離れていくだろう。それは余りにも悲しすぎる、辛すぎる。聡一郎は、大学病院を辞して、福島に戻ることも視野に入れて考えあぐねている。
聡一郎は、休日を利用して福島にいた。父と母にとって一人息子の聡一郎は、目に入れても痛くない存在である。「お父さん、お母さん、僕がここに帰りたいと言ったら、どう?」「大歓迎だ! 帰ってくるならクリニックを造るぞ」父は
上機嫌で答えた。母は「私も嬉しい! 一日も早くね」。
聡一郎は、意思を固めた。〈とにかく、正式に史にプロポーズして、受けてもらわなければ〉
「お父さん、お母さん、結婚したい人がいるんだけど」
「なに、そうなのか、どんな子だ」
「同じ職場で働いている薬剤師なんだ」
「そうか、一度会いたいもんだ」