【前回の記事を読む】幼馴染と久々の再会に抱き続けた感情が確かなものだと確信する。彼女が幸せになるならどんなことでもする、できる…

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知之は、病気の話をぐっと飲みこんだ。

「さあ行こうか、今日は会えて嬉しかったよ」

「知、私もよ」

知之は立ち上がる時ほんの少しよろめいた。歩く速度が上がらない。

「知、大丈夫?」

「大丈夫だよ、この間腰を打ってね。そのせいなんだ」

この日、知之はまた嘘をついてしまった。〈やっぱり、史をなくしたくないなあ、未練だ、未練未練……〉

知之は、史が住むマンションの近くに佇み、史の帰りを待っている。カフェで会って以来、二週間の間、会わずにいたのだ。一目でいい、史に会いたい。その一心でこんなところまでやって来た。随分時間が過ぎた。何時だろうか、スマートフォンで22時を確認した。

諦めて帰ろうとしたその時、腕を組みながら、マンションに近づく素敵なカップルが目に入った。史! 史ではないか。

知之は呆然とその場に立ち尽くした。二人は何かを語り合い、手を握り合い、そして、史は会釈をしてマンションへ。見送る男性の格好良さは、離れた場所からでもよくわかる。

「そうなのか、史、幸せなんだなあ」知之はゆっくりとその場を離れた。どのようにして帰ってきたのか覚えていないが、自宅にたどり着けた。暗い部屋に入り「ただいま」電気をつけて冷蔵庫の缶ビールを一気に飲み干して、もう一本。今度はゆっくり飲んでいると急に涙がこぼれた。