「何かわかったのですか? なぜ二人を現場に呼ぶ必要があるのですか」深瀬が訊いた。

「おおよそ犯人の目星はついたが、あとは動機だ。犯人は久原真波の描いた作品を見ることができて、栗林智久の存在を知る者かもしれない」

「つまり栗林智久はシロってことですかね。ということは紫藤美術大学の関係者でしょうか。同級生や教員など」

「いやそうとは限らない。この作品はおそらく多くのメディアによって人の目に触れたはずだ。媒体を通して見た人も考えればかなりの数がいる。その全員を辿ることは現実的に不可能だ。

だがなぜ『紫藤の木』ではなく『藤山』を描いたのか。なぜプロポーズの翌日に忽然と姿を消したのか。その事実を知るものはおそらく一人だけだ。そのことについては本人に語ってもらう必要がありそうだ」

「横川淳一ですか、それとも栗林智久ですか」

「ここにいるかもと踏んでいたが、いないようだ。深瀬、この人物のGPSを確認して欲しい。データを取り外して回収し、メモリーカードや内部メモリを確認してくれ。ログや日時の記録なんでもいい」

そう告げると鳥谷は咳き込みながら蔵を後にした。

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次回更新は2月22日(土)、21時の予定です。

 

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