「あ、はい、どうぞ」

警備員は朝本物が実際に来ていたためか、警察手帳も見せていないのにまるで疑う様子がない。それにしても金清はこんな違法捜査をして本当に大丈夫なのだろうか。警備員室に入ってしばらくすると、金清が出てきてSDカードを海智に見せてにっこり笑った。

「もう警察官じゃないのに、こんなことして大丈夫なんですか?」

「いや、俺はちゃんと『元』県警ですって言ったぞ」

「ええ? 聞こえませんでしたよ」

「そう? 『元』が小っちゃかったかな」

金清は全く悪びれた様子がない。海智は呆れてしまった。

エレベーターで四階に戻ると金清が天井に設置された半球型の器具を指差した。

「ほら、あそこに監視カメラがある。画角が百度もあれば、二台のエレベーターと階段を出入りする者は完全に押さえられる。残された出入口は非常階段の出入口だけだが、そこは通常は施錠されていて、鍵はナースステーションで保管されている。だから、監視カメラの映像を見れば信永経子が犯人かどうか分かるはずだ」

「さすが元警部補。抜かりないですね」

二人は海智の病室でPCにSDカードを挿入し、映像の再生を始めた。

「外出許可を貰って、家からパソコンを持ってこようと思っていたんだが、君が持ってきていてよかったよ。」

海智は七月十八日午後九時頃から映像を再生した。しばらくすると経子がナースステーションの方向から茶色のバッグを持ってやってくるとエレベーターで一階に降りて行った。その数分後、海智の病室の方向から禿頭が目立つ黒縁眼鏡の男が周囲をきょろきょろと窺いながら足音を忍ばせるようにして監視カメラの前を通り過ぎて、ナースステーションの方向へ向かって行った。

「金清さんじゃないですか」