医療事故で片付けられた、元いじめ加害者の死。「あいつを殺害したのは、あの子の母親かも…殺したいほど憎んでいるはずだから」
眠れる森の復讐鬼
【第18回】
春山 大樹
幻冬舎ルネッサンス主催『第5回小説コンテスト』特別賞受賞作品。
8年前のいじめが原因で焼身自殺を図り、昏睡状態となっている梨杏。そんな彼女が入院する病院に、かつての加害者たちが交通事故で搬送される。
看護師の一夏が昏睡状態のはずの梨杏が動き回る姿を目撃し、病院内で不可解な殺人事件が発生。
眠り続けているはずの梨杏は本当に復讐鬼となったのか――。
静かな地方都市の病院を舞台に、怨念と謎が交錯するミステリーホラー。
三人の若者が交通事故で救急搬送された。その病院には、8年前高校で彼らにいじめを受け焼身自殺を図り、全身火傷で昏睡状態となり人工呼吸器に繋がれている梨杏が眠っていた。次々と起こる殺人事件…果たして梨杏は復讐鬼となったのか――。憎悪と怨念が渦巻く戦慄のミステリーホラーの幕が上がる。※本記事は、春山大樹氏の小説『眠れる森の復讐鬼』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
眠れる森の復讐鬼
「まあ、三月までは県警で警部補をしていたんだが、六十歳で退官になってね。もう少ししたら警察官の退官も六十五歳まで伸びるから現役でいれたのに惜しいね。でもノンキャリだからこれ以上出世しないから別にいいんだけどね。
再就職先を探していたら、長年の不摂生が祟って糖尿病が悪化しちゃって、インスリンで治療しないと死にますよって先生から脅かされてね。それで今入院しているというわけさ。あいつらは俺の後輩だから、見舞いついでにちょっと情報を教えてくれたわけさ」
(警察官のくせに随分おしゃべりな人だ。そんな重要な情報を一般人に漏らして大丈夫なのだろうか)
だが待てよ、と海智は思った。この事件を解決するにあたり、自分一人ではどうにも心許ないと丁度思っていたところだ。金清が味方になってくれればこんなに心強いことはない。ただ、こんな荒唐無稽な話を相手にしてもらえるか一抹の不安はあった。
「金清さん、これは医療事故ではない可能性があります」
予想通り、金清は眉をひそめて怪訝な顔をした。
「どういうことだ?」
「金清さんに力になってほしいんです」