眠れる森の復讐鬼
「まあ、三月までは県警で警部補をしていたんだが、六十歳で退官になってね。もう少ししたら警察官の退官も六十五歳まで伸びるから現役でいれたのに惜しいね。でもノンキャリだからこれ以上出世しないから別にいいんだけどね。
再就職先を探していたら、長年の不摂生が祟って糖尿病が悪化しちゃって、インスリンで治療しないと死にますよって先生から脅かされてね。それで今入院しているというわけさ。あいつらは俺の後輩だから、見舞いついでにちょっと情報を教えてくれたわけさ」
(警察官のくせに随分おしゃべりな人だ。そんな重要な情報を一般人に漏らして大丈夫なのだろうか)
だが待てよ、と海智は思った。この事件を解決するにあたり、自分一人ではどうにも心許ないと丁度思っていたところだ。金清が味方になってくれればこんなに心強いことはない。ただ、こんな荒唐無稽な話を相手にしてもらえるか一抹の不安はあった。
「金清さん、これは医療事故ではない可能性があります」
予想通り、金清は眉をひそめて怪訝な顔をした。
「どういうことだ?」
「金清さんに力になってほしいんです」