「ひょっとすると母親の経子さんが変装してやったのかもしれません。彼女はあの三人を殺したいくらい憎んでいるはずですから」

「でもわざわざ変装する必要があるか? 中村大聖は意識不明の重体だったんだぞ。一人ぼっちのハロウィンほど寒いものはないぞ」

「精神的なストレスで解離性同一性障害になって、自分と梨杏の区別がつかなくなったとか」

「そりゃ君、映画の見過ぎだろう。それに、そんな遅くまで彼女は病室に残っているのか?」

「一夏の話だと毎日午後九時には帰るそうです。ただ、室内のトイレや浴室やロッカーに隠れていた可能性はあります」

金清は顎を頻りに擦って考え込んでいたが、何か思いついたように海智を見上げた。

「そうだ、それじゃあれを見てみるか」

彼はぽかんとしている海智の顔を見てにやりと笑った。

金清は自分の病室でスーツに着替えると、海智と一緒にエレベーターで一階へ向かった。

       

【前回の記事を読む】悪友とは言え、あれだけ仲良さそうにつるんでいたのに、昨夜死んだと聞いても眉一つ動かさない。これがこいつの真骨頂なんだろうか…

次回更新は2月16日(日)、11時の予定です。

       

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