ホリスティック医療

ホリスティック医療というのをお聞きになったことがあるだろうか。抗癌剤治療を断っただけでなく、本もいろいろ読んだ。草柳大蔵の『草柳大蔵と23人の対話 代替医療でヒトはこう変わる―あきらめる前にためしていいこれだけの方法』(現代書林 2001)という長いタイトルの本がとりわけおもしろかった。

今では医療というと、どうしても、西洋医学を中心とした治療法を思い浮かべる。それだけでは、解決しない問題も多く、西洋医学の利点を生かしながら中国医学やインド医学など各国の伝統医学、心理療法、自然療法などを加えて、ホリスティック(全的)な健康観に立脚し取り組む治療をホリステック医療という。

ホリスティック医学を推奨されている帯津良一先生の合宿セミナーに、家内と一緒に参加してみることにした。正式には、「がん患者のための帯津良一合宿、長野養生塾」という。

以前からたくさんの著作や、アメリカにいる頃からしている気功で、存じ上げていた帯津先生にお会いして直にお話を聞くこと、そして、もう一つは他の参加者と、癌という病気の体験を共有し対処の仕方について、考え方を分かち合うことが目的であった。

そうすることで、自分の抱える問題や悩みをしっかりと直視し、それらにどのように向き合うべきか自分で結論を出したかったからだ。

場所は長野市から車で三十分くらいの飯綱高原にある「いのちの森水輪(すいりん)」という施設。五万平米(一万五千坪)もある農場が付属している。農薬や化学肥料は無論、抗生物質や遺伝子組み換え植物が入らないように、動物性肥料もいっさい使わない完全無農薬の野菜を育てているという。

野菜に加えて、そば・大豆・小麦・とうもろこしなどの穀類、そして別のところで水田による稲作も始めている。

プログラムを見たら、朝十時の朝食と夕方六時の夕食だけの一日二食。それも、養生食という野菜と酵素玄米の菜食である。大丈夫だろうか。空腹に耐えるのも訓練かと悲愴な覚悟で出かけたが、この養生食が素晴らしかった。この養生食に惹かれたせいもあって、五月と八月と二回続けて養生塾に参加した。

二度目の養生塾に行った時、車座交流会Q&Aのセッションで帯津先生に質問する機会があった。車座交流というのは、帯津先生を囲んで三十人あまりの塾に参加した人たちが、順番に自分の病歴と疑問に思っていることや迷っていることを話して、その後気持ちがすっきりする機会である。一回、三時間くらい続く。

その後、私は池袋の帯津三敬塾クリニックで、定期的に帯津先生に診察していただき、漢方薬とホメオパシーを処方していただいていた。並行して、手術をした病院でも西洋医学的定期検診を受けていた。私の癌と「同行二人」はしばらく続いていたが、やがて両方とも解放された。