生立ち

また、大家族の末っ子になった小学3年生の頃から美味しい物をお腹いっぱい食べる事を覚え、自分で料理を作り思いっきり食べていたので、勝也は典型的な肥満児になっていた。

かなり太っていたので、母の知り合いから相撲を勧められ、毎週日曜日には相撲道場で稽古をしていた。

その後、小学5年生からは姉の影響もあって、少年バレーのチームにも入っており、6年生からはバレーと相撲を掛け持ちする、動けるデブだった。

進学した中学校は複数の小学校が集まる市内では一番大きなマンモス校だった。不良に仕上がっていた勝也は入学式の翌日に喧嘩をし、その翌週にも同級生と殴り合いをした。

バレーや相撲をしていた勝也は、喧嘩で負ける事はなかった。ただ、小学生の時とは違ってみんなが避ける訳でなく、むしろ友達になろうと言い寄ってくる子も居た。そんな周りの影響もあってか、中学生時代は喧嘩やタバコ、シンナーに窃盗など、悪い事ばかりしていた。

弓子はおばちゃんのスナックで働いていたので夜はおらず、勝也はやりたい放題の生活をしていた。そんな事もあって、夜は毎日おばちゃんの家に行き、紗香と遊んでいた。

毎日毎日遊んでいたので、互いに意識するようになり、中学3年生の時から交際する事になった。勝也は親の言う事も、先生の言う事も聞かなかったが、紗香の言う事だけは聞いていた。

本当に紗香の事が好きでたまらなかったからだ。紗香に嫌われるのが怖く、紗香の言いなりだった。勉強は相変わらずまったく付いていけなかったが、その頃から紗香と一緒に登下校するようになり、遅刻もせず、授業もさぼらず真面目に受けていた。

勝也の担任の先生はテレビドラマに出てくるような熱血教師で、どうしようもない不良の勝也と向き合ってくれ、高校に進学しても直ぐに辞めるのが分かっていたので、中学卒業後の就職先を世話してくれた。

その先生の大学の同級生が庭職人の親方だったので、勝也はそこへ就職する事になった。その頃、弓子はおばちゃんのスナックを辞めて自分でスナックをオープンした。

オープン当初からお店は繁盛していたようで、弓子は「昨日は売上が10万円を超えた」などと喜んでいた。お店の帰りには焼き鳥やおむすびなどを持ち帰ってくれる事もあったり、勝也は何となく幸せを嚙みしめていた。

そんな風にして勝也は中学を卒業し仕事を始め、紗香は進学し高校に通い、全てが順調だった。ある日、弓子が急に真剣な顔で「話がある」と言ってきた。ただ事ではないと感じた勝也は正座して黙って弓子の話を聞いた。