【前回の記事を読む】出所メシは、ケンタッキーと決めていた。大きなパーティーBOXを注文し、母の新車でむしゃぶりつき、一気食い。

出所後

紗香は涙もろく、直ぐに泣く性格だった。勝也は笑顔で紗香を抱きしめた。紗香は、お母さんが出所祝いにご飯を作ってくれているからと、勝也を家に招いてくれた。

紗香の家庭は在日韓国人。おばちゃんは料理が上手で、テーブルには韓国料理などご馳走だらけ。勝也は動けなくなるまで食べ続けた。

そして食後、勝也の部屋へ行き、二人きりになると、紗香はまた泣き出した。出所を喜んでくれての涙だと思ったがしばらくして紗香は真剣な顔で告げた。

「妊娠したかも……」

勝也は一瞬、心臓が止まったかと思うほど驚いた。しかし迷う事なく言った。

「産もう」

紗香は母親に言うのを恐れていた。それもそのはず、紗香の家は母親には絶対に逆らえない家庭だったからだ。決して口うるさい親でもなく厳しい訳でもないが、母親が絶対的権力を持っていたのだ。

そこで、まずは弓子に相談した。

「おかん、紗香が妊娠したみたいなんや」

弓子はこうなる事が分かっていたのか、動じる事なく言った。

「検査したんか? 薬局に行って検査キット買って検査してみろ」

検査の結果、やはり妊娠していた。しかし、勝也の決心は固かった。

「もちろん産んで育てる」