「お母さんが許してくれた」
紗香が病院で、「絶対に産みたい」と江美に泣きながら訴えたそうだ。勝也は今までの人生で一番と言って良いほど嬉しく、喜んだ。
勝也が江美に会いにいくと、もの凄く怖い顔でこう言われた。「父親代わりのおじさんに話しなさい」
いつも来ていた色の黒いおじさんの事だ。紗香の亡くなった父親のお兄さんだそうだ。
勝也は、そのおじさんに妊娠を伝え、「結婚させて下さい」と頭を下げた。そのおじさんは、色が黒くあまり笑顔のない怖そうな人だったので、かなりビビリながら伝えた。
しかしおじさんは珍しく笑顔になった。
「ええこっちゃ」
おじさんは勝也の事を嫌っていなかったようだ。その後、仕事の話や収入の話をすると、おじさんは「勝也くん、なんぼ稼いでいても自分の身体が使えなくなったらあかんような仕事はどうなのかな?」と心配そうに言った。
おじさんは建築関係の親方をしている人だった。そしておじさんは続けて「自分の身体一つで稼げる金なんかしれとる。人を雇って稼ぐと二人なら1.5倍、3人以上ならもっともっとや」と言ってくれた。
この頃から勝也の仕事への考え方が変わっていった。
【イチオシ記事】朝起きると、背中の激痛と大量の汗。循環器科、消化器内科で検査を受けても病名が確定しない... 一体この病気とは...