「おじいちゃんも魂が見える人だった。生きている人の頭の上に手を翳すと、その人の前世を視ることもできる。でも、他の人には見えないから、このことは決して誰にも知られてはいけないと言われたんだ」
「秘密?」
「そう、誰にも言ってはいけない秘密だ。自分たちと違うと思ったら、変わった人だと言って仲間はずれにしようとする人もいるからさ」
「仲間はずれは嫌だよ」
僕は眉間に皺を寄せる。
「だから、お父さんと光だけの秘密だ」
父はもう一度念を押した。
「光がもう少し大きくなったら教えることはたくさんあるけど、お母さんの魂がここにいる間は、お母さんのことだけを考えよう」と母の魂に視線を戻した。
「うん、分かった」
僕は大きく頷いた。
翌朝、僕は高熱を出した。
母の体は斎場に移されたが、とても葬儀に出られる状態ではなかった。そこで母の友人であるなっちゃんが、僕を看病すると言い、喪主である父を見送った。
なっちゃんこと藤輪奈津(ふじわなつ)は、母の中学からの同級生で、高校では父と同じクラスだった。父に母を紹介したのがなっちゃんで、ふくちゃんは恋のキューピッドだと言っていた。
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