希少な〈少女性〉を、なぜ美結に抱いたのか。美結の佇まいから直ちに結び付けられた〈少女性〉の言葉に含まれる性質とは一体? 感覚を言葉に変換するならば、〈希望〉であった。とすれば、現在の自分は「絶望」の渦中にあるのだろう。

美結はどこか〈少年的〉な側面も持ち合わせていた。喜美子にとって〈少女性〉と〈少年性〉は多くの部分で重なっていた。とくに前者は、自分自身と連続性があると信じていたかった。私の中にはまだ〈少女性〉がある。だがどこかで“男性性”の影に生じた“女性性”にきつく縛られているとも感じていた。

肉付きの良い胸や尻は、“男性社会”において魅力があるのと同義だった。男性を魅惑するために発達した“性的”な部位。今までも、男性社員からは女性として見られていた。そして企業は、“強い女性”としてのイメージが突き抜けなければ上に上がれないシステムになっていた。

人格が健全であると主張するためには「架空の恋人」をちらつかせなければならず、不倫にも寛容な、「美魔女」であると印象付ける必要もあった。

苦い記憶が蘇る。幼馴染の愛ちゃん。高校まで毎日一緒だった愛ちゃん。クラスが違っても昼休みは互いに顔を出し、晴れの日は、屋上や中庭で肩を並べて弁当を食べた愛ちゃん。仲良しなのは確認不要であり、二人手を取り合って「おばあちゃんになってもずっと一緒」と約束した。

卒業後は進路が別々になってもケータイでいつもつながっていたし、休日は原宿や表参道の洒落たカフェでのんびり過ごすこともあったし、相手の家に行き、そのまま一泊することもあった。

ところが、幼馴染はある日を境に遠のいていった。

      

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次回更新は1月26日(日)、18時の予定です。

         

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