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友情の芽生え
久しぶりに来た空き地には、太いロープが張られていた。大きな看板があって、そこには、「マンション建設予定地につき立ち入り禁止」と書かれてあった。読めない字がたくさんあったけれど、もうここに入ってはいけないんだということは僕にもわかった。
人気のない空き地は、がらんとしていて静かだった。あのブロックの椅子も、誰に運ばれたのか、もうなかった。しばらくぼんやりと、僕は空き地の前に佇んでいた。西の空には大きな雪雲が浮かんでいた。もうじき本格的な冬が来る、そんな日だった。
「まことくーん」
その時後ろから、息を切らせて駆け寄ってくるだいちゃんの声が聞こえた。
小さな反抗期
あの時のお父さんの手紙には何が書いてあったのか、そして僕は何て返事を出したのか、もう覚えてはいない。
ちょうどあの頃くらいから、もう僕はお父さんからの手紙を必要としなくなっていた。僕にとって、家族よりも、友達や学校という世界の方がずっと大事になっていった、そんな時期だった。
お父さんが単身赴任から帰ってきたのは僕が六年生になった時で、でもその頃には、休みの日に家族皆で出掛けようと声をかけられても、僕は両親と出歩くことを厭うようになっていた。親と一緒にいる姿を同級生に見られた時は、なぜだか恥ずかしいと感じた。
こんな思春期特有の心の変化は、僕だけじゃなく、少し遅れてだいちゃんにも表れた。でもその表れ方は、僕とは違って、激しいものだった。