元々運動神経の良い晃はこの夏、身長が伸びて、ちょっと女子からの人気も出てきたような気がする。背の高い洋子の身長にも、ようやく追いついてきたのはなんだか自信になる。

健斗は中学受験ということもあり夏期講習でもそうだったが、学校でも少し距離を感じるようになっていた。悟は相変わらずで、晃もきっともう少し勉強を頑張れば、すぐ特進クラスの連中と肩を並べられるだろうと思っていたし、勉強のことなど、さほど気にせず残された小学校生活を満喫することに決めていた。

卒業が近づくにつれ、何かと小学生最後のなんちゃらかんちゃらという言葉が使われるようになった。ひとつひとつ、すべてが卒業式までの思い出になっていくのはちょっと寂しい気分になる。

でも、晃は中学へ行っても、小学校の延長じゃないかと思っていた。ほとんどの友達はこのまま同じ中学へ行くんだから。私服が制服になるくらいかな、なんて晃はどこか他人事のように思っていた。

そんな晃とは対照的に受験組は子供心にも真剣度が伝わってきて、なんだか気を遣う。特に健斗は急に口数も少なくなって一層遠い存在になったような気がした。そして健斗に限っては、それが受験のせいなのか、塾のせいなのかと、時々晃は考える。

健斗の様子が気になってしまうのは、塾に通い始めてから晃にコンプレックスが生まれたからだ。

学校では威勢の良い晃だが、塾ではめっきりおとなしい。つまり晃は勉強が苦手なことに気づき始めて、そのことを少し恥ずかしいと思うようになっていた。

それがあって、時々健斗との距離を意識してしまう。

学校では陽気な馬鹿キャラにでもなんでも平気でなれるのに、塾ではそうはなれない自分がそこにいた。それはキャラじゃなくてリアルだからだ。