一樹のCTを見て、無知な私ですらハッキリと分かる白く写る再出血の現実を目の当たりにし、あとは一樹の心臓が止まるのを、ただ待つだけという現実がそこにはあった。
説明されている間、スーッと体から力が抜けていくようで、でも頭だけは妙に冷静かつクリアで、膝に座るまだ小さな凪人の感覚しかなかった。
医師の説明の後、ICUに入ると、目を閉じてもうなんの反応も返ってこない一樹の姿だけがあった。
説明はされても実感が持てなかった。
数時間前まで話していたのに、急にそんなことを言われても、頭の中も心もそんな現実には到底追いつけるはずがなかった。
けれど、どれだけ名前を呼んでも、何度身体を揺すっても、手を握ってもなんの反応もない一樹を目の当たりにした時、変えようのない現実、すべてを理解した気がした。
あとは医師の説明通り《心臓が止まるのをただ黙って待つだけ》という、耳を塞ぎたくなるような現実がそこには確かにあった。
私は一樹を失うんだ。私は置いていかれるんだ。
絶望とはまさにこのことなのだろうか……。
今まで、いろんな意味で絶望し続けてきたけれど、そんなものとは比べものにもならないほど壮絶で、絶望なんて言葉では足りなすぎるほどの感情、その時くっきりと私の心にポトンっと落ちた黒い影に、一瞬にして私の心は飲み込まれた。
もう目の前が真っ暗になり、心は潰れ、喜怒哀楽の感情さえ何も感じられなくなりそうな感覚だった。
私は一樹の隣で、なんだか力尽きるようにバタンッと椅子に腰を下ろした。
そして、もう何も考えられなくなった。