ねえ一樹、あの最後の数日、私たちの過ごし方は間違いだったのかな? もっと話すべき何かがあったのかな?

何かあった時はお互いさまだと、助け合うのは当然のことだよ、なんて会話ではなく……。

一樹を愛していると、何かあっても凪人のことは私が守るからとでも言っておけばよかったのだろうか。

何を話し、何を伝えておけば良かったのか……。

今でも分からずにいる。

一樹は、結果的に最後になってしまったあの数日間、私と一緒にいた時間に、これで良かったと思っているのだろうか。

一樹は一樹で、もっと伝えておけば良かったと思っていることがあるのだろうか。けれど、月日が経って思う。

きっと、どんな終わり方であったとしても、悔いや後悔は残るものなのではないか。一樹のように、くも膜下出血などの突然死もそうだけれど、事故や災害、たとえ闘病生活が長く、余命が告げられていて覚悟をした死であっても、その方と過ごす最後の時間があったとしても、亡くなってから〈やっぱりあの時こうしておけば良かった〉と、きっと、後から溢れ出てくる後悔や疑問は尽きないだろう。

後悔のない終わり方。

そんなものは、この世に存在しないのではないか。

せめて、亡くなるその人自身がなるべく後悔しない終わり方を、時間を過ごすことはできても、残された人は、その先も続く人生や毎日の日々の中で、苦しみ闘い続けているのかもしれない。きっと納得のいく死などないのだから。

        

【前回記事を読む】「また明日も来るからね」と、握っていた夫の手を離した…。その日が、最後の日になった。面会を始めて4日目のことだった。

本連載は、今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。

  

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