第1章 「細くて長い形の文化」は直立二足歩行から始まった

Ⅰ 人類は生き残るために直立二足歩行と体毛喪失の道を選んだ

人類は火を味方につけた

草原を生活圏とした人々は、全身がつるっとした柱のような群像であり、遠くからでもよく見つけられたであろう。その上、ひ弱で走る能力も劣っていたので、捕食動物からは恰好の餌の動物に写ったであろう。先人たちはこの特異な体形を恨んだかもしれない。

何はともあれ、細くて長い体形は人間の脳裏に深く刻まれたにちがいない。古代の人々はいつから火を使うことを覚えたのであろうか。

最初は、他の動物たちと同じように山火事などが発生すると、人々は迫ってくる火から身を守るために逃げまどっていたに違いない。

しかし、山火事が鎮火した森で、ちょろちょろと火が燻っている小枝を、勇気を出して触れてみたのではないだろうか。その時、大火は恐ろしいけれども、小さい火なら燃えていない部分に触れることができるし、怖くないと感じたと想像できる。古代の人々が火を味方につけた恩恵は計り知れないものがある。

第一の効用 焚火をして手をかざすと、暖かくて体温が上がる。体毛の喪失した人類に暖かさを提供し、寒さから人類を救うことができるようになった。

第二の効用 人間以外の動物が火を恐れることを知って、非力な人間が燃えている木を振りかざして、今までは逃げ回っていた捕食動物を追い払う武器を人類は手に入れた。夜中に焚火を絶やさないでいると、怖い動物が近づかず、安心して眠ることができるようになった。