第1章 「細くて長い形の文化」は直立二足歩行から始まった

地球上の多くの地域や多くの民族のもとで、特色ある多彩な「細くて長い形の文化」が花開いた。しかし、多岐にわたる「細くて長い形の文化」も、発達の過程をたどっていけば、源流にたどりつく。

Ⅰ 人類は生き残るために直立二足歩行と体毛喪失の道を選んだ

最初の人類である猿人が、類人猿などの霊長類の中から分岐して生まれてから、おおよそ七〇〇万年が経過している。

猿人の分類に入るルーシーとその家族が、約三〇〇万年以前にエチオピア北東部ハダール村付近で生活していたことが知られている。

ルーシーの命名者は、その化石人骨を発見したドナルド・ジョハンソンとトム・グレイで、当時流行していたビートルズの流行曲の題名から命名された。

発掘時に全身の約四〇%にあたる骨がまとまって見つかったことから、ルーシーの身体の特徴が判明できた。

ルーシーは、脳の容量四〇〇cc、身長一〇五cm、体重二八kgのチンパンジー並みの女性で、手の指の骨から、枝などにつかまりやすい骨格構造を持つ一方で、骨盤や大腿骨などの形状から、現代人とほぼ同じ二足歩行できる骨格を持っていた。

これらの根拠から、ルーシーとその家族は森の中で樹上生活をしながら、二足歩行で森の中や周辺を歩き、木の実などを採取していたと考えられている。

その後、人類の先人たちは、おおよそ二〇〇万年前に森の中の樹上生活から、草原に進出して生活する方向に舵を切った。その変化に適応すべく、人間の体形も進化していった。

危険の多い草原で生き抜くためには、草原を遠くまで見渡しながら、武器などの荷物を持って長時間歩くことが必要となる。そのため、歩行の際に衝撃を吸収し、安定した歩行ができるように、足の親指がずんぐりとなり、親指以外の四本の指が短くなり、土踏まずの湾曲部ができた。さらに、身体全体にも変化が生じた。