第1の人生の労務キャリアのスタンス・姿勢に関しては、組織へのコミットメント(誓約)であったが、第2の人生の労務キャリアは、専門性へのコミットメントに変わっていく。

またアイデンティティに関しては、第1の人生の労務キャリアでは、「組織から尊敬されているか?(他人からの尊重)」、「自分は何をすべきか?(組織認識)」、ということにアイデンティティを位置づけるが、

第2の人生の労務キャリアでは、「自分を尊敬できるか?(自尊)」、「自分は何をしたいか?(自己認識)」ということにアイデンティティを位置づけるのである。

またアダプタビリティ※1に関しては、第1の人生の労務キャリアでは、「組織に関する柔軟性(組織内での生き残り)」への意識が特徴づけられるが、第2の人生の労務キャリアでは「仕事に関する柔軟性や適応力」、「自分の市場価値はいくばくか?」ということに関心が変わっていく。

また、従来の定年退職後のキャリアビジョンにおいて、交流に関しては、ほぼ同世代の年齢の人たちだけとの付き合いであった。これからの長寿命時代は、従来の同一世代間のみの交流が崩れ、異世代間交流をも巻き込んだ多様世代間交流の時代に変わる。

さらに、単純な同一世代のみの交流時代には、発生しがちであった異世代間の意思の不疎通が是正される。それ故に同世代一斉行進的な集団から抜け出し、自分自身、つまり個を重視する考えに切り替える思考が必要になってくる。

年齢がどうだ、ではなく、個人のキャラクターがどうなのかが、問われる時代になるのである。例えば非常に著名な人を紹介されたとする。そのときもその著名人の人物評価は他者、周囲の情報からではなく、個が輝く時代の自分自身で下すのだ。

さらに、いくら素晴らしい本を読んだり勉強をしても、個人により理解度、表現度は異なり全く別物の現象が現出し得るのである。1世紀近く前に、すでにアルバート・アインシュタイン氏が言っている。

「優れた科学を生み出すのは〈知性〉と多くの人は言う。彼らは間違っている。それは、〈人となり〉である」。長寿命化社会は個人の人間力が輝く時代なのである。


※1 時代背景などの環境変化に合わせて適応できる能力のこと

 

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