すぐ布刀玉命(ふとたまのみこと)が、

「もう決してこの中に入らないでください」

と述べて入り口を縄でふさいだ。

天の岩屋戸から天照大御神が出てきたので、高天原も葦原の中つ国もすっかり明るくなり、八百万の神々が大喜びしたことは言うまでもない。

この後須佐之男命は、髭を切られ、手足の爪も切られ、高天原から追放されたのである。

天の岩屋戸に閉じ籠もった天照大御神を、外に戻すために用いた八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は大王家に伝わる三種の神宝のうちの二宝である。

  

高天原を追放された須佐之男命は、母の国に行こうとしていた。出雲の国の斐伊川(ひいがわ)の上流の鳥髪(とりかみ)という山あいの地に天下っていた。ふと川に箸が流れているのが目に留まった。

こんな山の奥にも暮らしている人がいるのかと思いながらさらに登って行ったところ、屋敷がありその中からさめざめとした泣き声が聞こえてきた。中に入ると、一人の娘を挟んで年老いた爺と婆が、娘を撫でながら泣いているのだった。

爺の名は足名椎(あしなづち)、婆の名は手名椎(てなづち)といい、その間にいたのが二人の子である奇稲田姫(くしいなだひめ)という美しい娘であった。

泣いている理由を須佐之男命が爺に尋ねたところ、つぎのように答えた。

  

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