第一章
数日後、光一と小太郎、啓二の三人は例の和菓子屋のホームページとeコマースのシステム構築の打ち合わせを終え、いつものように行きつけの「おみち」で飲んでいた。
「しおりが挟んであったあのページに意味があるんじゃないですかね」
「オレもそう思って、帰ってからそのページを読み直してみた」
「なにかわかりましたか?」
「ああ、とくに関連するような内容は書かれていなかった。あのページの内容が直接守屋さんの父親の死に関わっているとは思えない。やっぱり……」
「やっぱり、なんですか?」
「ヒエタノアレモコロサレキだよ」
「え、やっぱり、あの文字に意味が……」
「知りすぎた者は消される……。歴史の裏側を少しでも覗いたことのある人間なら、誰しもがそう翻訳するだろうな。つまり稗田阿礼は『古事記』以前に存在した古代文字に精通していたと同時に、この国の歴史の真実を知っていた。それをもとにして『古事記』を編纂した後、知りすぎていたがゆえに消されたと……」
「ちょっと待ってくださいよ。いま歴史の裏側って言いましたよね。歴史に表とか裏なんてあるんですか?」
「ああ、表の歴史は全部ねつ造されたといってもいいだろう。真実の歴史は隠されている。少なくともオレはそう思っているよ」
「なんかヤバい雰囲気になってきましたね」
「ヒエタノアレモコロサレキ。この短い文章は、本来こんなカタカナで書かれていたものではない。
九州の高千穂連峰、クシフル岳。その山中にいつの時代のものかわからない古い石碑が建っていて、そこに解読不能な文字で書かれていたというんだ」