【前回の記事を読む】書斎に現れたのは身長わずか20センチの少女だった!? 「キミは誰なんだい」謎の少女の正体は…

第一章

「老人の好奇心にしてはカワイすぎる……」

そういうと少女は少しはにかんだしぐさを見せた。しかしそれを隠すように強い口調で言い返してきた。

「あなた、好奇心をなんだと思っているの。好奇心は歳をとらないのよ」

「好奇心は歳をとらないか。確かにそうだね」

そういってからしばらく沈黙が流れた。少女は書棚の縁で、足をぶらぶらさせながら口を開いた。
「でも、龍クン突然死んじゃったからなァ。私、つまんない」

「龍クンって、いつもそう呼んでいたの?」

「呼び合ったりしないわ。だって龍クンと私はひとつだから」

「一つ、聞いてもいいかな」

「あなたって意外と礼儀正しいのね。どうぞ」

「龍クンはどうして死んだの」

すると、少女は突然顔を曇らせてぼそりとつぶやいた。

「殺されたの……」

「誰に……」

「鬼の心を持った人間」

「やっぱり殺されたんだ。龍クンはどうして殺されたと思う?」

「わからないわ」。少女はそういうと力なくため息をつき肩を落とした。

「龍クンはほんとのことを知ろうとしていたの。私はそれに付き合っていただけ。あなたもかなりの知りたがりね」

「わかるの?」

「わかるわよ。龍クンとおんなじだもん」

「そうなんだ」

「私、そういう人間が大好きなの。知りたい知りたいってその人が思うと、私までわくわくしてうれしくなって、いろいろ助けてあげたくなるのよ」

「ところでキミ、名前は?」

「名前なんかない。すぐに名前を聞くのがあんたたち人間の悪いところだわ」

「でも名前がないと不便だよ」

「好きに呼べばいいわ」

「そういわれても困るよ」

「うーん、じゃあなたがさっきからずっと持っている本。そう、それ。ユーカラだからユカって呼んで」