けれどもそうではないらしい。少し落胆したが、伯母を元気づけようと話してくれた事だと納得した。

伯母が、姿は観えないが自分の席に座って、新聞を読んでいると話す。そんなわけで存在はいつも感じているしなんだかほっとすると哀愁を込めて話した。

それゆえ照史の話すことも理解できると言った。自分が元気になる事を人のいい伯父は望んでいる。そうでなければ亡くなった人が浮かばれない、と何か決意を持っている。それに照史も大いに賛同して、いつまでも悲しんでいたら、旅立った人が心配すると伝えた。

私はそれらを聞いて、以前よりだいぶ気持ちの整理がついたのだと感じた。それがすごく嬉しい。

それに加えてそもそも死んでないと独り言のように、ぼそっと呟いた。それを私は聞き逃さなかった。それにより照史をまじまじ見つめていると、うまく濁されてしまった。

照史はそろそろお暇するとおもむろに立ち上がった。伯母が玄関で見送り、私は一緒に外へ出た。列車が駆け抜ける風と、蒸し暑い気温が悩ましい。しかし線路沿いにタチアオイが淡いピンクの花を咲かせていて、それが不快感を和らげる気がする。

彼はタチアオイが天辺まで咲くと梅雨明けになると話した。私はその花の名前も初耳だった。

【前回の記事を読む】伯父の葬儀の日に出会った端正な顔立ちをした青年。「綺麗な顔だなぁ……」そう思った

 

【イチオシ記事】ホテルの出口から見知らぬ女と一緒に出てくる夫を目撃してしまう。悔しさがこみ上げる。許せない。裏切られた。離婚しよう。

【注目記事】「何だか足がおかしい。力が抜けて足の感覚がなくなっていくような気がする」急変する家族のかたち