【前回の記事を読む】学習指導要領を無視している――生物の授業中、山野草の話をし続ける教師にとうとう怒りの抗議が…
二 清水の爺ちゃん高校の先生になる
校長先生は、ただ校長室にいるだけでは、かったるく運動不足になるので、散歩がてら校内を巡回(じゅんかい)することがあった。
そうすると、どの教室からもテープレコーダーで録音(ろくおん)したような経(きょう)のような先生の音声(おんせい)だけが聞こえ、窓越(まどご)しに見える生徒たちは、決まったように机に突っ伏(ぷ)して寝込(ねこ)んでいるのだった。
ところが、清水先生の教室は違っていた。時の流行(はや)り歌やロシア民謡(みんよう)の歌声が聞こえてきたり、先生の熱を帯(お)びた声が聞こえてきたりする。これに対して生徒たちの拍手(はくしゅ)や笑い声が聞こえてくる。生徒たちは冗談(じょうだん)を言い合ったり、野次(やじ)を飛(と)ばしたりしていた。
校長先生は最初驚いたが、今では特別(とくべつ)何も感じなくなった。当たり前の光景になったからだった。
でも、今回の苦情(くじょう)、抗議(こうぎ)は簡単には収まりそうになかった。
「こんな学校は、後(あと)にも先(さき)にも見たことも聞いたこともない。呆(あき)れて話にならない」とのことで、清水先生の授業は言語道断(ごんごどうだん)、それを平気(へいき)で許している学校の問題。
根本的(こんぽんてき)な「学校改革(がっこうかいかく)」まで要求(ようきゅう)してきた。これでは、校長と教師間(きょうしかん)だけで収まりがつかなくなった。
この高校の理事会(りじかい)でも問題となり、ついに私立学校の監督権限(かんとくけんげん)を持っている都の学事課(がくじか)にまで問題が提起(ていき)されることになった。困り果てた校長先生は、覚悟(かくご)を決めた。