「驚いたなあ」

「俺こそ驚いたよ、ここで会おうとは」

二人は驚きを隠せないでいる。

知之はメンバーを見送った後、カウンター席にいる邦夫の隣に腰をかけた。

「一体どうした、残業の帰りか?」

「いいや、聞いてくれるか?」

邦夫はビールを一気に飲み干して言った。

「今夜なあ、告るつもりで好きな人と食事をしたんだよ。しかしいざとなったら、言い出せないもんだな」

「そうなんだな。似たような俺たちってことか」

「全くだ」

「ところで、邦の相手は俺が知ってる人と違うよな、まさか」

「そのまさかだ」

「え~~! もしかして咲なのか」

邦夫はこっくり頷いた。

「そうかあ、俺ものすごく嬉しいよ! 成功を祈るよ」

「ところで知、史とはその後どうなってる?」

「メールのやり取りはしてるけど、ここ数か月会ってないんだ。いや会えないんだ」

「病気のことを話せないんだな」

「ああ話せない、話す時は別れる時だろうよ」

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