一週間が過ぎたある日、課長が手招きをしている。
〈OKいやNO?〉知之は自然に速足になった。
「課長、お呼びでしょうか」
一呼吸おいて課長が親指を立てて発した言葉。
「やったね~~小暮」
「え! そうなんですか! よかったあ」
知之は、プロジェクトメンバーを招集した。
「みんなありがとう。案通りで詳細をつめていくことになった。ありがとうな」
チームメンバーは、ハグをしたり、握手するなど激しく高揚している。知之もその輪に加わっている。イベントの開催は、二か月後の十一月第一日曜日と決められた。
帰宅した知之は、まだ高揚した気分が治まっていない。ボッチ飲みで祝杯をあげるかなどと思っているところに、メールの着信音がした。プロジェクトメンバーの紅一点、木下真理からの飲み会の誘いである。
駅前の「今昔」という居酒屋で、例のメンバーが集まっているようだ。知之は、すぐに駆けつけると返信した。店内は結構混みあっている。入口に近いところに掘りごたつ式の個室があり、そこに五人全員揃っている。
「待ってましたよ~~」
「はやくはやく」
知之が席に着くと、ビールが運ばれてきた。
「もう一度みんなで乾杯しよう!」
「それではリーダー乾杯の音頭をどうぞ」
知之は〈素敵なメンバーだな〉と思いながら、「みんなありがとう、一発快挙に乾杯!」それからは、歌こそ歌わないものの、楽しく充実した時間が流れた。
知之は、全力で協力・支援してくれた邦夫と咲のことを考えずにはいられない。二人のお陰で自分がこの場に存在できているのだから。
そろそろお開きの時間だと感じた知之は、「みんな今日の支払いは俺に任せろ!」「ご馳走になっていいんですか」みんなの笑顔がはじけている。支払いをすませ、店を出ようとしているところに、なんと、邦夫が入ってきた。