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その夜、自宅に邦夫と咲に来てもらい、試飲会の話をした。邦夫と咲は前のめりになってあれこれ案を出してくれる。

どんな銘柄の酒を用意するのか、酒に合うつまみは用意するのか、用意するとしたら出店がいい、その場所は? 参加費はいくらに? 広報は? などなど、話は夜半まで続いた。

〈この爽快感、やり遂げたい気持ちはなんなんだ!〉

知之は、将来に向かって進むべき何かが見えてきたように感じていた。

会社の会議室では、知之をリーダーに試飲会プロジェクトが始動していた。総勢六人。知之は自分で選んだメンバーを最強だと自負している。

机の上には、自慢の銘柄の酒が十種類並べられている。会社の平面図もある。パソコンでホームページを立ち上げている。他社が発行したイベントのチラシやイベントで出店している店の一覧もある。

簡単に自己紹介をすませた後、知之が発言した。

「社運をかけてとまでは言わないにしても、今回限りでポシャるようなことにはしたくない。参加してくださるみなさんに喜んでもらえるイベントにしよう」

その後はフリートークで進められた。

「最初に、社内で実施することが可能かどうかだな」

メンバーは平面図のあちらこちらを指さしながら、酒と紙コップを並べる位置と出店設置箇所から実施可能な場所を選んだ。

「ここなら混雑することなく楽しんでもらえるよな」

「酒は、純米吟醸酒・純米酒・吟醸酒の中から人気のある五つの銘柄を選ぶのはどうだ?」

「それがいい、自分がいいと思うものをまずは選んでみるか」

最終的に、フルーティ、辛口、やや甘口、まったり系の中から、五銘柄を選んだ。

「出店はどうする、味もだが安全第一だよなあ」

「枝豆、たこ焼き、お好み焼き、おでんはどうだ?」

「鉄板の持ち込みがOKだと可能だな、店に聞いてみないとな」

「問題は参加費だ。日頃のご愛顧に感謝するイベントだろう?」

「一人が飲む量を考えると1、000円までが妥当だろう」

広報は、会社ホームページへの掲載、チラシの配布によって行うことを決めた。素案は課長に提出した。後は裁断を待つのみである。