二、高校受験失敗から補欠募集への回想

昭和三十三年、私が幼い時に、居酒屋トラヤの親父がカーバイドランプを用意している時「おじさん何しているの?」と話しかけると、

「ランプに燃料を入れているんだよ!」

「石ころが燃料?」と尋ねると、

「不思議だろう。この石に水滴が垂れると燃えるんだよ!」

「へー、面白い!」

トラヤの親父がランプの蓋を開けて、カーバイドをランプの容器の中に入れた。

私は「変な臭いがする」

トラヤの親父は「この石は、触ると臭いが手に移るので、厄介なんだ」

蓋を閉めてから水タンクを装着して、水滴の量をつまみで調整して、一秒から二秒で水滴が落ちるようにする。

暫くしてからシューッと、ガスが発生する音がする。吹き出し口に火を付けると明かりが灯る。

トラヤの親父は「ほら、明るいだろう。多少風が強くても消えないんだ!」

「おじさん、明るいネ!」

カーバイドランプの灯りは、蛍の灯りのようで幻想的な雰囲気をかもし出していた。自宅の冬場の暖房は、七輪が欠かせない。私が幼い時は、七輪に火を起こすのは、私の仕事であった。

七輪の下部に小さな小窓がある。小窓は、一酸化炭素中毒にならないように酸素を供給して、燃焼温度を千六十度から千百度に上げて、一酸化炭素の発生を抑制するために設けてある。七輪に着火剤が付いている練炭を入れて、割り箸などの木片と紙切れを使って火を起こして、練炭に着火する。

自宅の近くの割烹料理屋の店先には使用済みの割り箸が置いてある。

割烹料理屋の店主に「おじさん、この割り箸少しちょうだい」と頼むと、店主は微笑みながら「いいよ!」と。

子供好きで優しいところがあるが、少し短気な面があった。