二、高校受験失敗から補欠募集への回想

暫くしてから「俺の受験番号が掲示されていない。悔しい」と吐き捨てるように言って、立ち去った。私は、クンチが相当悔しい思いをしていると感じた。昭和学園に合格していたので、高校には進学できる、と考えながら嫌な思いをした合格発表の日を思い出してから、折角訪ねてくれた西に、「話は終わった。早く帰れ!」と素っ気なく告げると、

「マツ、また、誘いに来るよ!」と捨てぜりふを言って、自宅に帰った。

次の日、「マツはいるか! いるなら返事をしてくれ!」と。

大声で玄関の引き戸前で、西が叫んでいる。私は「うるさい。何の用だよ」と玄関の引き戸を開けて、怒鳴った。

「昨日と同じ都立高校の補欠募集の受験を誘いに来た」

「しつこいなぁ、もういい加減にしてくれ! 昭和学園に入学することを決めたので、聞く必要はない」とがなり立てると、西は「先ずは、話を聞いてから決めた方がいいよ!」と冷静に促した。

私は、西が誘う補欠募集のことに気乗りがしない。それに試験を受けることに嫌気が差していた。父親には昭和学園に進学することで了解を得ていたので、入学金を納めることを決めていた。

「補欠募集の試験は受けないと昨日言っただろう」

「兎に角、話を聞いてから決めた方がいいよ!」

「明日、昭和学園に入学金十万円を納めるから聞く必要がない」と強い口調で答えると、西は「入学金を納めるのを待った方がいいよ」と私を説得した。「余計なことを言うな!」不機嫌に答えた。

「よく考えてから払ったほうがいいよ」と忠告を受けた。

西は、諦めなかった。