「お前が決めることじゃないだろ!」とがなり立てると、

「補欠募集する学校のことを聞いてからにしたら?」

「明日入学金を納めるから、補欠募集の話は聞きたくない。さっきから言っているだろう! 俺は、お前が薦める高校の受験は受けない」と答えた。

「入学金を納めたとしても三年間に納める総額で判断するべきだ!」

「入学金や学費の支払いは、西には関係ないだろう」

私は、暫くしてから根負けして、仕方なく「わかった。学校の所在地は何処だ」と尋ねた。西は「学校の所在地は、田無市向台町だ」と答えた。

「学校の所在地が田無市向台町と言われても場所がわからない。遠そうなので通い方がわからない。乗り換えが多いと通いたくない」とひねくれた態度で吐き捨てた。

西は「それでは、保谷工までの経路を説明する。国鉄中央線の立川から二十分で武蔵境に着く。武蔵境駅の北口を出て、西武バスまたは、関東バスに乗車して十五分位で武蔵野女子学園前のバス停で下車する。バス停から学校まで徒歩で五分、待ち時間を考慮して約四十分、通学には一時間は掛からない」と説明した。

私が「通学経路はわかった。俺は、西が誘う保谷工の補欠募集の受験は絶対に受けない」と言うと西は「通学も毎日通えば馴れる」「どんなに誘われても断る。昭和学園に入学することに決めたから今さら受験する必要はない!」と怒鳴った。

「マツが補欠募集を受験するようにしてみせる。また、誘いに来るョ。マツに補欠募集の試験を受けさせる裏技がある!」と言って人差し指を立てながら自信のある笑みを浮かべて、玄関の前に立っている。

私は腹を立て、「気持ち悪いニヤケ笑いするな! お前のことは、一度も友人だと思ったことはない! 補欠募集の試験は、お前が受ければいい! 俺には関係ないことだ。顔も見たくない! 早く帰れ!」とがなりたてて玄関の引き戸を閉めた。西は自宅に帰った。