私の自宅は、立川駅南口から徒歩三分位の錦栄会商店街の中にある。父親が昭和二十七年に、曙町二丁目の共同住宅の管理人として住んでいた建物が取り壊されることになり、立ち退き保証金を元手に、立川の実業家の中野喜助氏が、立川北口の闇市を解消するために分譲した、錦栄会商店街の一区画を購入した物件である。
街並は、新宿ゴールデン街のような雰囲気がある、飲食店が立ち並ぶ商店街である。住民には、元プロ野球選手と兵隊あがりの飲み屋の親父、顎ひげがトレードマークの煮込み屋の店主など、異色な人達が居住していた。
居酒屋トラヤの調理場は、白色電球で明かりを灯していたが、客溜まりの灯りは、カーバイドランプを使用していたので、カーバイドが燃えると結構嫌な臭いがしていた。
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