何の予定もない代わり映えのしない休日が続いて、栞はすることもなく退屈で雑誌の「ダイエット特集」をひとり眺めていた。ここに書いてあることくらいもう全部知っていると思うのに、ダイエットの情報はいつも気になって隅から隅まで隈なく読んでしまう。

誰かと外で食事することをできる限り避けて、いつもまっすぐ家に帰った。家では毎日同じようなものを食べて、休みに出かける機会も減っているのだから、刺激もときめきもない生活が退屈なのは当たり前だった。

お洒落をすることが栞の一番の楽しみだったのに、洋服を試着してもどれもサイズ感が不自然で、何を着ても似合わず買い物さえもあまりしなくなっていた。栞は自分には何もなくて、からっぽだと虚しく感じていた。

凍てつくような冷たい日が続いたある日、招待状が届いて学生時代の友人、奈津子の結婚披露パーティに招かれた。

懐かしい学生時代の友人が集まることに心は動いて、栞は出席することにした。パーティでの「食べる」「食べない」という葛藤や痩せていることを指摘されるかもしれないと考えると、億劫に思う気持ちもあったが、拒食症のせいでもう栞の心は疲れ切っていた。家と会社を往復するだけの毎日にも、カロリーコントロールをすることにも飽き飽きしていた。

いつもと違う場所に行って、懐かしい友達にも会ってみよう、何より奈津子に会って結婚をお祝いしたいという気持ちがあった。場所はターミナル駅の高層ホテルの宴会場で、久しぶりの華やかな場所に栞の心は浮き立った。

「栞、久しぶり、あれ? どうかしたの? 痩せちゃって」

誰からも開口一番「細い、痩せた」と言われ続けた。痩せていると言われることが、本当は嬉しいはずなのに、素直に喜ぶ気持ちにはなれなかった。