いつかテレビを消す日まで

友人は傷を付けられたような趣で、力を落として帰って行った。

ひとりぼっちになったスズキ青年は、言い過ぎた言葉を反省した。しかしもう友人は戻らない。なにか途方もない過ちをしたかのような、心の中のなにかが欠けた気分に陥った。しかし残った缶詰を平らげ、水道水を飲み干した。あとはもう寝るだけだった。大衆社会に方向性と活力を与える放送は去り、仲間も喪失した。

スズキ青年はいよいよ孤独な気分になり、寝台にうつぶせになった。布団をかぶって静かにしていると、疲れからかいつの間にか眠りについた。

あえかな夢の中では、もうすでに遠くに去った人々の生活する真ん中で、笑ったり悩んだりする光景に出会った。もうすでに去って久しい人々の生活に寄り添い、夢の中でスズキ青年は自由で生き生きとした人生を送った。

  

我、水の底より

友人には月一で遠出をするノルマがあるというので遊水池へ散策へ出かけた。

水源地の湿り気が鼻腔をくすぐり、よく茂った緑の草いきれが新鮮であった。水は透き通って神秘さをたたえ、ときおり息づく自立した生命の活動に心を動かされた。

湿原を貫く遊歩道を果てしなくゆくと、なぜか機動隊と治安部隊が出動していた。

一般客は遠巻きに眺め見守っていた。

友人は隣客に「なにがあったのですか?」と尋ねた。