「何、これ?」

そう言って一夏は海智のスマホを取り上げた。

「おい、ちょっと、他人のスマホを勝手に見るなよ」

海智は慌ててスマホを取り返そうとしたが、彼女はくるりと踵を返して彼をかわした。立合いの時もこんな感じだったなと変なことを思い出した。

「『娘は仲のいい女友達と二人でコンサートに行くと言って家を出て行った。それが彼女との最後の別れになるとはその時は夢にも思わなかった・・・・・・』何これ、ひょっとして海智、ミステリー書いてるの?」

「返せよ」

彼はようやく彼女の手からスマホを奪い返した。

「すごいじゃない! 海智、ミステリー作家になるの? 海智にそんな才能があるなんて思いもしなかったわ。完成したら私にも読ませてね」

まだ書き始めたばかりのところで、才能も何もあったもんじゃない。だが、どうせまたからかわれるんだろうと思っていたところを意外にも褒められたので、海智は赤面してしまった。

「一夏、信永梨杏のこと知ってるだろう」

海智は唐突に切り出した。

「え、ええ・・・・・・」

何故か彼女が僅かに動揺しているように見えた。一夏と梨杏は一度も同じクラスになったことがなかったはずなので海智は少し不審に感じた。

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次回更新は12月15日(日)、11時の予定です。

 

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