2 外資系にもいろいろある

コミュニケーションと言語

もう一つ、多くの日本人は知っていても外国人は知らないことがかなりありますが、それを考えずに英訳して相手に伝えても、聞いた方は理解できないことがあります。

筆者が学生時代にした失敗をお話ししましょう。筆者は学生時代に外国人観光客を無料で案内するGood Samaritan Club(グッド サマリタン クラブ)というサークルに入っていました。

ある日金閣寺を案内したときに、「夕佳亭」という茶室の前で、あの床の間の左側に見えるのは有名な〝南天〞の床柱で、あそこまで大きくなるのはきわめてめずらしいことですと言うために、南天を和英辞典で調べてNandinと言ったのです。相手はもちろん何のことを言っているのかわからずに怪訝な顔をしていました。

後で考えたのですが、これは当然のことです。日本では南天はお正月の飾りで多くの人が知っていますが、植物学者でもない一般のアメリカ人にとっては、南天(Nandin)はいくら説明されてもわからないし、興味もなかったのです。

最後に、ビジネスにおいては誤解されるより理解できない方がいい場合もあります。よくわからないと言われてもう一度詳しく説明し直し、そして正しく理解してもらう方が、誤解にもとづいて経営戦略や実行計画がトップ・ダウンで決められ、後になって相手が誤って理解していることがわかった、などというよりよほど好ましいことは確かです。

後で取り上げるビジネス上の危惧や懸念はその一例ですが、日本人同士でさえ難しい、言葉では説明しにくいいわゆる肌感覚を外国人に伝える場合には、相手の理解した内容を確認するくらいの慎重さが必要です。