まとめ
この章の要点はつぎのとおりです。
†外資系にもいろいろな会社があります。一般的なイメージどおりの外資系もあれば、日本の会社と同じような企業文化の会社もあります。外資系はこうだと一概に決めつけるのはよくありません。
†海外へ進出した日本の企業も現地では外資系です。私たちが外資系のことをよく話題にするのは、日本の会社のビジネスのやり方が外資系と異なることが多いからです。逆も同じです。
†外資系で働くことは、生まれも育ちも違う国の人とコミュニケーションをすることです。これは、日本の社会やビジネスのやり方など、日ごろ当たり前と思っていたことを見直すいい機会になります。
†言葉の裏にはその国の歴史や文化があります。日本語で話すことを英訳して話せば相手は理解してくれると思っていると、相手が理解できないことや、誤解が生じて後で問題になることがあります。
3 私は会社で何をしたらいいか
指示待ち社員と終身雇用
かなり昔、1980年代の初めのことになりますが、日本では「指示待ち族」という言葉が流行したことがありました。これは、新入社員が会社で何をしたらいいかわからず上司が指示するのを待っている、しかも上司はこと細かに具体的に指示しないと、社員はどのように仕事をしたらいいかわからない、というようなことを表した言葉です。
こうした「待ち」の姿勢の社員のことを、マスコミは「指示待ち族」と名づけました。
おそらく若干の誇張はあるものの、当時の日本の会社では、新入社員のみならず若手社員を含め、多くの社員が上司の指示を待って仕事をするのが一般的だったのだろうと思います。このような状況は今ではかなり変わったのでしょうか。ことによると今でもあまり変わっていないのかもしれません。
外資系の会社では、社員が自分の職務をよく知らない、会社で自分は何をしなければならないかわからない、などということはあまり聞いたことがありません。
新卒で入社した社員には似たような現象があるかもしれませんが、かなりの割合を占める中途入社の社員は、自分の職務つまりしなければならない仕事やその内容を認識しています。そして入社早々から仕事に取りかかります。このような違いはどこからきたのでしょうか。
もっとも大きな理由の一つは雇用にかかわるプラクティスの違いでしょう。最近の日本では終身雇用が変わりつつあると言われています。派遣社員が増加し、非正規社員などの問題も生じています。
しかし、終身雇用が崩れつつあるといっても、今の日本の「正社員」と呼ばれる人々のなかで、ひょっとすると来週になったら自分は職を失うかもしれない、などと考えたことのある人はほとんどいないでしょう。
逆説的な言い方ですが、そんな恐ろしいことを考えたことがないから、また考える必要がないから、安心して指示を待つことができるのです。
【前回の記事を読む】外資系で働くことはダイバーシティのなかに身を置くということ。まさに異文化コミュニケーションそのもの!