【前回の記事を読む】会社で上司から高評価を得るために必要なのは、自分の気がすむようなやり方で仕事をするのではなく...?
3 私は会社で何をしたらいいか
社員を純粋培養する日本の会社
日本の会社では、ほとんどの社員は新卒で一斉に入社し、オリエンテーションや初期教育の後、会社の人事計画にしたがって配属先が決まり、本人に通知されます。別の見方をすると、これは他の会社から転職してくる中途入社の社員はほとんどいないということです。
一方外資系では、新卒採用もありますが中途入社が一般的で、一度辞めた会社に再び戻ったなどということもそう稀ではありません。
たくさんの日本の企業が海外へ進出している現在、このような生え抜きの従業員を中心とする経営、つまり「純粋培養」方式の問題点もあります。例えば北米やヨーロッパを見ると、転職は当たり前で、いわゆるブルーカラーは別として、同じ会社に何十年も勤めるなどということは一般的ではありません。また新卒の一括採用といったプラクティスもありません。
そういった国や地域に今やたくさんの日本の企業が進出し、現地の企業を買収したり子会社を設立したりしています。このような状況のもと、もはやグローバル企業となった日本の企業にとって、現地では現地方式つまり中途入社方式で日本では純粋培養方式、という二つの対処が実行可能で会社の経営にとっても好ましいのでしょうか。
それともどちらかに統一する方向なのでしょうか。現地では新卒一括採用が一般的でないとすると、優秀な新卒を採用することは難しいかもしれません。日本の本社において、新卒一括採用をやめて中途採用を一般的にするなどということは、日本の雇用環境だけでなく会社の風土や社員の士気、その他人事制度全般にも関係するため、おそらく簡単にできることではないでしょう。
なお最近「ジョブ型雇用制度」という言葉を見聞きするようになりました。経団連も加盟企業に対して導入を呼びかけています。ジョブ型つまり職務単位で雇用する仕組みはまさに就「職」そのものです。これは外資系でよく見る人事制度、広い意味でのビジネス・マネジメントの一つとして、その長所も短所も含めこの本のあちこちで触れています。
後で述べるダイバーシティともからみますが、日本の会社の純粋培養の仕組みのなかで育った人たちは、ダイバーシティの対極とも言える環境、もっとも多様性の少ない環境で育った社員です。会社で必要とする非常に優秀な人材を純粋培養で育成できるか、という問題も無視することはできません。