電車は速度を落とすと、終点松本の外れのホームに停まった。骸骨は電車を降りると辺りを見回した。大部分の人が右手の階段を昇っていき、数人が左の方へ歩いていく。少し離れたところに小編成の電車が停まっていた。

どちらへ行こうかと考えた。右手の階段は人で溢れていた。向こうのホームにも多くの人が立っていた。おしゃれに着飾った人々が目について、それが都会へ向かう路線であることが知れた。そのホームに電車がゆっくりと入ってきて停まった。ドアが開くと沢山の人が吐き出された。一方左手の電車はぽつんと停まっており、普段着の人が一人また一人と乗りこんで行く。

骸骨はそちらへ歩いていった。今は大勢の人々の視線に晒されるのは堪らなかった。行き先は不明だが、ローカル路線であることは間違いなさそうだ。目的地はあとで考えてもいいのだ。

  

やっと松本に到着した。三時間遅れを辛うじて十分縮めての到着だった。夜通し座っていたので腰が痛んだ。ホームに降り立つと、伊藤医師は思い切り欠伸をした。そしてゆっくりと辺りを眺め回すと、「これが松本かぁ」と呟いた。

頬を撫で回すと不精髭でチクチクした。襟首が汗で湿っており、額も脂で汚れていた。まずは髭を剃って顔を洗って、それから仕事にかかるつもりでいた。遠くに霞む山々を眺めて、あれが北アルプスだろうかなぞと考えたりした。だが大した感慨もない。山の景色を眺めるくらいなら、昼寝でもしていた方が増しだ。

そんなことを思いながら、方々を眺めていた時のことだった。

【前回の記事を読む】骸骨探しの手掛かりは少しだけ。シラミ潰しに運転手を尋ねたとして…知っていて庇うかも、何か企んで軟禁しているかも知れない

次回更新は12月6日(金)、11時の予定です。

 

【イチオシ記事】突然の交通事故で意識不明の重体。目覚めると以前の面影が無いほど変わり果てた姿で…

【注目記事】「誰、どうして」…壁一つ隔てた部屋からかすかに女性の声が聞こえた夜