第1章 自然・地理

氷河とオーロラが世界で一番容易に見られる国

世界に目を向ければ、巨大氷河は南極大陸やグリーンランド、アラスカ、パタゴニア、ニュージーランド等で、またオーロラについても、同様に極地に近い国々で見られるのだが、いずれもそれらを実際に目にする為には、市街地や繁華街から離れた遠隔地に行く必要がある。

一方で、アイスランドではオーロラはレイキャビク市の街中でも見られるし、巨大氷河も交通量の多い幹線道路(国道)から容易に見られるばかりか、そこから数百m歩くだけで氷河の末端まで到達出来る(写真4)。

写真4|氷河の末端に立つ筆者

つまり世界で最も容易に氷河もオーロラも見られる国なのだ。オーロラについては、後述「気象庁が毎日オーロラ予報を出している国」もご参照。

ヨークルスアゥルロゥン氷河湖

レイキャビクからリングロード(巻頭カラー写真参照)と呼ばれる国道1号線を半時計回りに380km、車で5時間前後走ると「ヨークルスアゥルロゥン湖the Glacier Lagoon of Jökulsárlón」という、氷塊が漂う氷河湖に到着する。

アイスランドの南東部には巨大な氷河が幾つかあるが、最大のものが既述のヴァトナヨークトル氷河で、そこから分かれたブレイザメルクルヨークトル氷河(Breiðamerkurjökull)の先端から溶け出した水が湖を作り、そこに氷塊が漂う景観を作り出しているのがこの氷河湖。この難解な名前の意味は「氷河の川の湖」。

この湖が形成された原因は、やはり温暖化による氷河の後退で、1935年頃から後退によって出来た谷に水や氷塊がたまり始め、やがて現在の様な湖になったとされる。氷河の重みに地面がえぐられた跡に出来た湖である為、その深さは最深部で248m、現在の面積は18km2(東京ディズニーランドとディズニーシーの合計面積の18倍)だが、年々拡大している(1970年代と比べると既に面積は4倍になっている)。

大人気の観光地で、眼前に広がる様々な形と色の氷塊の美しい光景には、暫し時を忘れるほどだ(巻頭カラー写真参照)。