大噴火からの奇跡の脱出劇、ウエストマン諸島ヘイマエイ島がある国
ウエストマン諸島(Vestmannaeyjar)は、アイスランド本土南海岸の沖合10kmに位置する15の島と30以上もの小島や岩礁からなる群島だ(図3)。
この群島は過去数千年にわたる海底火山の爆発によって作られたもので、特徴的なのは、島々が一直線上にきれいに並んでいること(写真5)。
このラインは本土のエイヤフィヤトラヨークトル火山、カトラ火山といった嘗て大噴火を繰り返してきた火山群がその延長線上にあり、まさに、ユーラシア・プレートと北米プレートの裂け目の上に、火山や火山で出来た島々が並んでいる様子が一目瞭然の場所でもある。
群島の中では、ヘイマエイ島(Heimaey、「家のある島」の意)のみ人が住んでいるが、その歴史は、ヴァイキングのアイスランドへの入植が始まる874年に先立つと言われ、実際に考古学者によって800年頃にノルウェー人修道士と思われる渡来人によって建てられた住居跡が発見されている。名前の由来は、「西洋から来た修道士が最初に定住した島」だから「西洋人(ウエストマン)の群島」と名付けられたと言われる。
レイキャビクからは、空路で25 分、陸路・カーフェリー利用の場合には2時間半程度でヘイマエイ島に到着する。島の面積は13.4km2(=1340ヘクタール、東京ドーム286個分)で、2023年時点の人口は4135人。
この島を世界的に有名にしたのは、1973 年1月に発生した大規模な火山噴火。この噴火の溶岩は住宅地にまで迫り、全家屋(1200軒)の内、3分の1に相当する400軒が焼失乃至(ないし)は溶岩流に飲み込まれた。
幸いにも5800人余りの当時の島民は、全員漁船で本島に避難し、死傷者は1人も出なかったが、噴火が最終的に鎮まった数ヶ月後には、町のほぼ半分が溶岩と火山灰ですっぽり覆われ、「現代版ポンペイ」としてその模様が世界に発信された(写真6)。