プロローグ 覚醒
「おらが見たこともないような、そりゃあ見事な剣でした」
ペペは思い出して瞳を輝かせた。その剣に一目で魅せられたペペは、これを打ち鍛えた職人にぜひ会わせてくれと懇願したのだと、その経緯(いきさつ)を話した。
ギガロッシュに入れと言われた時は腰を抜かしたが、剣の魅力に恐ろしさも忘れ、決死の覚悟で来たのだと、ペペは一気にその様子を語った。
「シルヴィア・ガブリエルが途中まで案内したのかね? あそこは迷路のような所だ。お前さん一人では到底抜け出せまい」
その問いかけにペペは頭(かぶり)を振った。
「おら、一人で来ましただ。あの人に道順を教わって、そのとおりに来たつもりでしたが、どこかでおら、やっぱり道がわからんようになってしもうて。迷ったらそこへ戻って動くなと教えられた一番大きな女神岩とかいう所でじっと待っておりました。そうせえと言われとりましたんで」
息を殺し、心配げに様子を窺っていた村人は、それを聞いてほっと胸を撫で下ろした。あらかじめ道を偽って教えたのだろう。そうとは知らないペペに、ファラーまでもが「それは気の毒なことだったな」と笑った。
「それはそうと、シルヴィア・ガブリエルは向こうで何をしているのだね」
ファラーが尋ねると、村人も身を乗り出した。
ペペの話によれば、彼は最初アンブロワで何か手柄を立てたとかで領主に召し抱えられたが、容姿も美しく知恵が回ると、えらく評判になり、今ではプレノワールの大領主カザルスにも気に入られ、月のうち半分以上はプレノワールの城内にいるらしい。
「彼の身元は……伏せられているのだね?」