初デートでも意外な申し出
当然のことながら、私は同僚CAに取り囲まれ、質問攻めに遭うことになりました。
「まあ、あなたったら、うまいことやったわね。何を話しかけられたの?」
「まさか、あなた映画にスカウトされたんじゃないでしょうね?」
「えっ? デートに誘われたんですって! 羨ましい!」
「一度でいいから、あんな素敵な人に、デートに誘われてみたいわ!」
「それにしても、どうしてフミコに声をかけたのかしら? 不思議だわ」
羨望、嫉妬など、いろいろな言葉の並みいる金髪美女を差し置いて、なぜ小柄でぱっとしない東洋人の私に声をかけたのか、その理由は私自身が知りたいくらいです。憶測はともかく、まぎれもなく、声をかけられたのは事実です。嬉しさの絶頂にある私には、同僚たちの恨みの声など、どこ吹く風です。
旅慣れたプレイボーイの中には、空の楽しみはCAを口説くこと、などとうそぶく人もいます。確かに私のような小柄で冴えないCAでも、デートの誘いはよくあるのです。それでも、こちらにも選ぶ権利はあるので、受け取った名刺を破って、屑箱に捨てたことは何度も。ぜひもう一度会いたいと思う人は滅多にいないのです。
しかし、イタリアの映画関係者のハンサム氏には、引っ込み思案の私も、すっかりその気にさせられてしまいました。私の心を虜にしてしまったのですから。
ニューヨークに戻るとすぐに、私のローマ行きのスケジュールを知らせる手紙を書きました。