序章 ローマの流行作家 自信家たちのエピソード

超イケてる彼は何者?

CA(当時は「スチュワーデス」と呼ばれていました)時代の一時期、約六年間というもの、一年に何度もローマにフライトしたものです。私の勤め先だったパンアメリカン航空(パンナム)は、CA自身が好きな航路を選択できるという、大変恵まれた環境にありました。

その恩恵を利用して、私はたびたびニューヨークからローマへのフライトをチョイスしました。

70年代の初めのこと。ローマとニースの間をフライトした時のことでした。その飛行機には、カンヌ国際映画祭に出席するイタリア映画界の一行が乗っていました。有名な映画プロデューサーに率いられた面々でした。

その中に一人、飛び抜けてハンサムな男性がいたので、CAの同僚たちは騒然としていました。何しろ、一行の中には映画スターもいるのですから、美男美女のグループであるのは当然なのですが、その中でも、私たちが興味を示した男性は、ピカイチのハンサムなのです。

当時のCAは二十代で若く、年頃といえる女性ばかりでした。素敵な乗客に出会えば、興味を持つし、ときめきます。

そのとき、ファーストクラスの担当をしていたCAは、白人、黒人そして東洋人である私の三人でした。その三人の評価が、人種を超えてぴたりと一致したのも珍しいことです。乗客がハンサムか否かというのは、CAの国籍の違いなどで、なかなか評価が一致することはないものです。それが三人とも迷うことなく一致したのです。