「どこから見ても素敵! 飲み物は私が持っていくわ」
「うわー、うっとりする……。彼、私を見て微笑んだわよ」
「ねえ、彼独身かしら? 誰かそれとなく聞いてみてよ……」
そんな会話が私たちの間で飛び交いました。そうしているうちに、エコノミークラスの担当CAたちも、噂を聞きつけて、ファーストクラスに様子を見にやってきました。そして誰もが彼の美貌にめろめろということに……。何とかしてこのスーパー・ハンサム氏と会話を交わし、自分を印象付けたいと、CAたちは、あれやこれやと心を砕いているのでした。
白人CAは、モデル経験のある抜群の容姿の持ち主。黒人CAは、メリハリのあるボディが際立ってチャーミングです。
堂々と闊歩する彼女たちと比べて、私は身長も低く、容姿にも自信がありません。こういうときに、私は腰が引けてくるのです。自分に対する評価が低いのは、日本人的人見知りがあるからかもしれません。私は彼に対して、急速に関心が薄れていくのが分かりました。
ところがハンサム氏、こともあろうに、そばを通りかかった私を呼び止めたのです。そして少し会話を交わした後に、ポケットから名刺を取り出しました。
「ねえ君、今度ローマにフライトするときには、ぜひ僕のところに電話してくれたまえ。いろいろ案内させてもらうよ」
私は渡された名刺を手にしたまま、茫然自失のごときありさまでした。やっと気を取り直して聞いたのは、我ながらあっぱれな質問でした。
「でも私が電話して、奥様が出られたら困るんじゃないかしら?」
「ふふふっ、その心配は無用だね。なぜなら僕は独身なんだ……」
彼は魅力的な眼差しで私を見つめたのでした。