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「用があったのはニコなんだから、もうそんな心配するなよ」
「お気楽なこと言わないでよ。あいつがこんなところまでのこのこと何をしにくると思ってるの。
あのおじさんだって似たような状況になってるってことよ、その女と。そこであたしを見かけたりしたら今度は見逃してはくれないわ」
「さっきの話だけど、その相手の女はどうなったんだい。部屋にいたのか」
とたんにキーラの表情がさっと青ざめた。唇を噛みしめ、目を逸らせて、わからないと首をふった。
「とにかく部屋にはいなかった。きっと、もっと酷い目に遭ってるはずよ。そういうやつよ、ジョジョっていうのは」
二人の間に暗い沈黙がおりた。キーラの心には計りしれない不安が募り、エゴルには悪い予感 が膨らんだ。
「わかってると思うけど、今の話はすべて内緒だからね。ママになんか漏らすんじゃないわよ」キーラは最後にエゴルの心を逆撫でしていった。あの男からかくまってやったはずなのに、エゴルの男気はまたしてもこの小娘にへし折られてしまった。