アニタは自分の直感を疑わなかった。きっとこの男は……あれは何かを押し殺していたのだと確信した。無表情につとめる彼の視線はじっとカーシャの体をとらえて離さず、ときおり小鼻がひくりと動くのがわかる。

やがて何度目かでカーシャの白い胸が大きく波打ち、喘(あえ)ぐように水を吐き出した瞬間、こらえきれずにユーリの股間(こかん)でいきり立ったものをアニタは見逃さなかった。

「ろくでもないことをしなきゃいいが……」

吐き捨てるようなアニタの言葉を、村長夫人は笑って打ち消した。

「大丈夫よ。ユーリがちゃんと見てくれているもの」

彼女はおぼつかないカーシャの行動ばかりを案じて、アニタの言葉をまるっきり取りちがえている。

―わかっちゃいないんだよ、あんたらは。

アニタは心の中でつぶやいた。

2

畑のあちらこちらに無造作に積み置かれた土嚢(どのう)は、二年前にようやく終息した紛争の置き土産(みやげ)だ。誰がいつ撤去してくれるのか、あてのないままずっと放置されている。

この村は国境に位置する。いや、正確に言えば二年前になんら望んだわけでもないのに国境の村になってしまった。というのも、東南方向に隣接していた二つの県が自治権を勝ち取って独立を果たしたためだ。